ディズニー・ファンティリュージョン!
1995年7月〜2001年5月まで東京ディズニーランドで行われていた夜の光のパレードです。
それまでのエレクトリカルパレード(初代)とは打って変わって、大人の雰囲気と色使いの斬新なパレードでした。
3ブロックに分かれた構成のパレードは、ファンタジーランドをスタートすると、それぞれのブロックが3か所ずつ一旦停止し、
パフォーマンスを行い次のブロックへ流れていく…というそれまでには無い方式でたっぷりとエンターテイメントを楽しめました。
今でもこのパレードのファンは多く、再開を求める声も聞かれます。そんなファンティリュージョンをこの特集記事では詳しく掘り下げていき、
観たことのない人にも魅力が伝えられるよう、複数回にわたって細部までお伝えしていきます!
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光と幻想のストリーム…
光と幻想のストリーム、ディズニーファンティリュージョン。
まずはそのパレードの先頭から最後までの流れと、パレードが誕生するまでを紹介します。
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パレードの基本ストーリー
パレードは3部構成になっていて、「ミッキーのマジカルガーデン」→「ディズニーヴィランズ」→「ハッピーエンディング」 というふうに進行していきます。
ミッキーのマジカルガーデン
パレードの初めは、ミッキーとその仲間達、妖精達、花や生き物達が色とりどりの光と明るい音楽にのってやって来ます。
様々な花や、蝶、トンボ、妖精達が生き生きと踊る、まさにマジカルガーデン。ショータイムには、ミッキーの仲間達がどこからか登場し、 みなさんにご挨拶したり、はしゃぎ回ったり。ディズニーヴィランズ
ミッキー達が過ぎ去ると…どこかマイナー調に音楽が変わり、不気味な雰囲気になっていきます。そして現れるのがディズニー映画で活躍した悪役達。
なにやら呪文のようなものを唱えている悪役達と共にやって来るのは、クモや蛇、クラゲ、カラス、炎など。
電飾もどこか不気味な色合いで、 恐ろしさを一層引き立てます。ショータイムには、悪役達はメタモルフォーゼで大変身!コブラやドラゴンになったり、巨大化したり…でもディズニーの悪役達は、 なぜかクールでおしゃれな印象もあります。ハッピーエンディング
最後にやって来るのは、各ディズニー映画で主役飾ったカップル達。悪の恐怖に打ち勝ち、パレードルートルートを再び煌びやかに照らしてくれます。
このパートは、お城や噴水、ドレスアップしたダンサー達など。ショータイムにはミラーボールやキャンドルが登場し、パレードルートは、 舞踏会の会場へと早変わり。祝福ムード一色になります。
そして最後にはミニーが後ろで向きに手を振りながら別れの挨拶をし、パレードは終わりを迎えます。 -
ファンティリュージョンになるまで
東京が世界初公演だったファンティリュージョン、その誕生のきっかけとは…
先代のエレクトリカルパレード
1985年から始まり、大変な人気を誇りディズニーランドの代名詞とも言える東京ディズニーランド・エレクトリカルパレード。
誰もが知るこのパレードも、10年という節目の年月が近づき、新たなエンターテイメント導入の声が少しずつ高まっていました。
1972年にカリフォルニアのディズニーランドで世界最初のエレクトリカルパレードがスタートし、東京ディズニーランドでは1985年に 少し構成などを変えて始まりました。
暗い夜にパレードをするにあたり、全体が電飾でできているという斬新さと、当時まだそれほど 一般的でなかったコンピュータサウンドによる楽曲、この組み合わせにより話題と人気を博しディズニーランドに行ったことのない人でも知る 著名なエンターテイメントになりました。エレクトリカルパレードの基本情報
- 全長
- 約600m
- 電球数
- 約50万個(7色)
- スタート
- 19:30
(冬季など一部例外あり)
- フロート数
- 44台
- 公演期間
- 1985年3月9日〜1995年6月21日
新パレードとファンタズミック!
ナイトエンターテイメントの刷新が囁かれ始め、最初のミーティングが開かれたのは、1993年10月のことだそうです。近い将来に10年を迎えるエレクトリカルパレードを 新しいものに変えるにあたり様々なアイデアが出されました。その中の一つに、当時フロリダで1992年にスタートし大変な人気があった、 「ファンタズミック!」を東京にも導入するというものです。
ファンタズミック!は、当時の最新技術、 ウォータースクリーン(噴水にアニメーションなどを映し出す)や花火、特殊効果などを駆使した夜のショーでした。
しかし、これを行うには広大な貯水スペースを必要とするため、東京ディズニーランドでは不可能でした。(後にオープンした東京ディズニーシーで開催されることとなる) そこで、ファンタズミック!を東京オリジナルのものへ変化させ、パレードとして開催しようという流れになりました。ファンティリュージョンという名称とストーリー構成
ファンタズミックという名前のファンタジーと、イリュージョンを掛け合わせた造語、「ファンティリュージョン」が生まれました。
そして、パレードのストーリーもファンタズミック!にならい、ミッキーや仲間達の登場→ヴィランズが悪さをしミッキーたちの邪魔をする→ 最後はミッキーの仲間達が再び返り咲くという大まかな流れが決定しました。
これらについて、次号以降でさらに詳しく掘り下げていきます!お楽しみに!
ファンティリュージョンの魅力
ファンタズミック!をベースとし、東京に合わせオリジナルで出来たファンティリュージョン。
まさに東京でしか観られないパレードに仕上がり、
未だにリメイクなどもなく、後にも先にも貴重なものとなりました。(後にパリへと輸出されますが大幅に短縮されるため同じものとは言えない)
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魅力その1〜音楽〜
ファンティリュージョンと聞いて最初に思い浮かぶのは、なんと言ってもテーマ音楽!という方も多いのではないでしょうか。
85人のオーケストラ
ファンティリュージョンの楽曲は、全て本物のオーケストラによって収録されたものだとご存知でしたか?
ロスの85人のオーケストラと、歌手や声優(俳優)を加えた大掛かりな録音によって出来ています。 作曲は、Bruce Healey(ブルース・ヒーリー)という人で、ウォルトディズニー・パーク&リゾーツで30年以上にわたり、 音楽監督やプロデューサーとして活躍し、ファンタズミックのテーマや数々のショー楽曲を作った人だそうです。人の手によって演奏された壮大な音楽
先代のエレクトリカルパレードは電子音で構成された、それは当時斬新なものでキャッチーでとても話題を呼びました。
それと打って変わって、対局を行くバイオリン、フルート、トランペット、ティンパニーなどクラシック音楽で使用される楽器を 用い、曲調もリズミカルでポップなものから大人びた壮大なものへと転換しました。
総作期間8ヶ月
作曲から収録、編曲までトータルで8ヶ月を要したと言われており、その力の入れ具合がわかるかと思います。
また、ディズニーランドのパレードは基本、それぞれのフロート(キャラクターが乗っているもの)からの音楽とパレードルートに流れる音楽は、 アレンジが違うので、アナログで録音されたもののピッチを調整する時間や労力などもかなりのものだったと思われます。 パレードの音楽構成については次号以降で特集します! -
魅力その2〜メタモルフォーゼ〜
ファンティリュージョンの最も特徴的な一つ、メタモルフォーゼ(変形・変態する)。
パレードモードとショーモード
ディズニーランドのエンターテイメントでは基本的に、進行している状態をパレードモードと言い、 止まっている状態でパフォーマンスすることをショーモードと言います。
ファンティリュージョンはパレードの中にショーモードを組み合わせた、初期のものでありエレクトリカルパレードにはない演出でした。
楽曲もフロート停止と共に一旦停止し、ショーモードの音楽がパレードルートのスピーカーやフロートのスピーカーから一斉に流れ、 パフォーマンスが始まるという当時とても斬新なものでした。1部(ミッキーのマジカルガーデン)
パレードは先述した通り3部構成で、1部〜3部ともに停止しそれぞれに違った音楽とパフォーマンスが繰り広げられました。
ミッキーのマジカルガーデンでは、フロート達が一旦停止し暗転します。そしてミッキーや妖精達が魔法を唱えると、 各フロートの電飾がシルバーに一変し、ミッキーの仲間達がフロートから登場します。
ミッキーマウスマーチや、星に願いを、君も飛べるよ、ハイ・ホーなどの軽快な定番ミュージック合わせ、キャラクター達が パレードルートをはしゃぎ回ったり踊ったりと、約2分の賑やかなショーが繰り広げられます。2部(ディズニーヴィランズ)
ヴィランズ達も一旦停止し、暗転。そしてヴィランズ達が「光を奪い闇を作り出せ!」と唱えると、フロート達はブラックライトに照らされ、 これまでと違った表情を見せます。また、全身を黒いスパンコールで覆っていたダンサー、モンク達は、蛍光色のガーゴイルや蛇へと変身し、 和太鼓のサウンドを演奏し始めます。そして音楽もピークに達した時、ヴィランズ達はコブラやドラゴン、毒林檎を持った魔女へと変身したり、 巨大化させ己の力を誇示します。
3部(ハッピーエンディング)
パレードの最後を飾るカップル達は、一旦停止し「闇から光のなかへ戻れ!」と唱えます。
そうすると、カップル達の台座がせり上がりミラーボールやキャンドル燭台が現れ、ワルツ調の音楽とともに、 舞踏会が始まります。台座は回転し、アラジンのカーペットは空を舞い、カップル達が観客達に笑顔を振り撒きます。
ダンサー達は、それまでの大きなスカートからチュチュのような衣装へと変身し、軽快なステップでダンスを繰り広げます。 電飾もゴールドを基調としたものに一変し、豪華なムードに包まれます。
そして約2分の舞踏会が終わると、再びパレードは動き出し余韻を残しながら去っていきます。 -
魅力その3〜デザインと電飾〜
大人の雰囲気ただよう豪華なパレード
全体的なデザイン
ディズニーのパレードは、ディズニー映画のワンシーンなどを基にしたものが多いのは共通ですが、エレクトリカルパレードは フォルムが単純化されたような動物や植物、おもちゃに似せたような乗り物などコミカルで可愛らしく子供達に親しみやすいデザインが中心でした。 しかし、ファンティリュージョンでは一変しまるで対極を行くように、植物達はよりリアルになったり、ダンサー達の衣装も豪華なドレスだったり、 お城や岩肌が細かく表現されたり、直線的なデザインから曲線を多用したものになるなど大人びた印象で優美なパレードでした。
電飾
先代のエレクトリカルパレードでは、6色の電球を約50万個使用していましたが、ファンティリュージョンでは12色100万個へとグレードアップ。 さらには光ファイバーやブラックライト、当時最先端だったLEDを多用し、「光」の表現の幅を広げた画期的なパレードでした。
現在のエレクトリカルパレードは、LEDを中心とし現代の技術により色の表現域も広がってより鮮やかになっていますが、ファンティリュージョンでは まだLEDの技術も乏しい時代だったため白熱球の電球を中心としていて、色の幅は少ないものの温かみがあり、パレードルートはやわらかい光に包まれたものでした。
電球にもそれぞれ装飾された傘がついており、ひとつひとつの電球の光をより大きく見せる工夫もされ(クリスマスツリーの電飾のようなイメージ)、 豪華な印象を与えました。 -
魅力その4〜当時の最新技術〜
自然をモチーフにしたデザインなどでクラシックに見えるものの、使用されている技術は当時最新のものばかりでした。
停止型パレードと音楽
1995年当時より、東京ディズニーランドでは「停止型パレード」が導入され、パレードが一旦目の前で止まると別のパフォーマンスが行われるという パレードの新しい形が出て来ました。
このシステム導入にともないパレードルートにはフロートの位置確認のためのチップが埋め込まれたといいます。それにより、どのフロートがどこにいるか、 ということがわかり、停止位置に来た時に音楽が切り替わるようになっています。また、生演奏を録音した各フロートごとの音楽を寸分の狂いもなくピッチを 合わせるなど優美なパレードの裏側には技術の結晶が隠されています。 詳しくは次号以降で衣装やライティング
最新技術が散りばめられているのはフロートや音楽だけじゃありません。衣装には当時実用化が進み始めていた光ファイバーがたくさん使用され、 光ファイバーでマクラメという編み込み方をした繊細な技術の生地も採用されました。
また、衣装には電池や装飾の軽量化(ダンサーの負担軽減)、をはじめ恐らく防炎生地も取り入れられていたことでしょう。
一方ライティングには、音楽に合わせ点滅したり色を変えたり強弱をつけるなどコンピュータプログラミングとシンクロさせて制御するという 技術が用いられています。これには2ヶ月以上の期間を要し、これにより音楽と光が一体となりまるで魔法を見ているかのように楽しませてくれます。 詳しくは次号以降で -
魅力その5〜ストーリー性〜
ただキャラクターが過ぎゆくだけじゃない見応え。
ディズニー映画に欠かせない正義と悪
先代のエレクトリカルパレードは、それぞれのディズニー作品からキャラクター達がパレードに参加した、というようないわゆる参列と 最後にイッツアスモールワールドへと続くというものでした。(It's a small woorldはディズニー自らがプロデュースしたアトラクション)
しかし、ファンティリュージョンの元となったファンタズミック!は、ミッキー達のもとへ悪役達が邪魔をしにくる、そしてミッキー達の純粋な思いが悪に打ち勝つ、 というストーリーになっているように、ファンティリュージョンでも悪役達が登場します。
悪があってこその正義でもある上に、ディズニーの悪役達はそれぞれがお洒落でクールなためファンも多くストーリーには欠かせません。この悪役達がまるまる2部 を占めるという大胆な演出がこのパレードの最大級の特長でした。そして最後はヒーロー&ヒロイン達で締めくくるという、パレードを見ていると同時にディズニー映画 を鑑賞しているかのような壮大なストーリー展開がファンティリュージョンの魅力でもありました。 詳しくは次号以降で
基本データ
パレードの基本データやルートをまとめます。
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データ
- 全長
- 約500m
- 電球数
- 約100万個
- 光ファイバー全長
- 1620km
- キャラクター
- 40体
- ダンサー
- 118人
- 鑑賞時間
- 約30分
- 公演時間
- 約50分
- 公演期間
- 1995年7月21日〜2001年5月15日
- 投資額
- 約30億円
- スタート
- 19:30
(冬季など一部例外あり)
- フロート数
- 31台
(最終公演時までに調整され28台)
- コスチューム数
- 約180着
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ルート
パレードが通る道筋と、停止する位置や鑑賞場所。
基本のパレードルート
東京ディズニーランドでは、基本的にパレードは以下のルートを通ります。
ファンタジーランド(ホーンテッドマンション横)からスタートし、シンデレラ城周辺のプラザを周り、トゥモローランドへと向かってトゥーンタウンから帰って行きます。
これから通常の時間、19:30にパレードがスタートした場合の動きを解説して行きます。
※下記は現在のパークマップです
※1995年パレードスタート当時はトゥーンタウンは公開前
ファンティリュージョンの動き
●19:30〜19:40ころ
先頭ブロックのミッキーのマジカルガーデン(1部)が、ファンタジーランド・ウェスタンランドに停まり約2分のショーが始まります。
※中心のピンクがシンデレラ城です(上方はホーンテッドマンション)●19:40〜19:50ころ
先頭ブロックはプラザへと進み、続くブロック、ヴィランズ(2部)がスタート。先ほどと同様停止し、1部2部共に、各々の約2分のショーが始まります。
※中心のピンクがシンデレラ城です(上方はホーンテッドマンション)●19:50〜20:00ころ
上記からの流れで、1部2部が動き出し最後のブロック、ハッピーエンディング(3部)がスタートします。
この時、1部はトゥモローランド、2部はプラザ、3部はウェスタンランドに停止し、パレード全体がパーク内に存在している状態になります。
そして各ブロック共に約2分のショーが始まります。●20:00〜20:10ころ
1部は全てのショーを終えトゥモローランドを出発し、トゥーンタウン(1995年当時はなかった)を通り帰って行きます。
2部はトゥモローランドへと進み、3部はプラザへと進みます。
ウェスタンランドではパレードが全て終了し、照明や音楽は通常通りに戻ります。●20:10〜20:20ころ
2部もトゥモローランドを出発し帰って行きます。
3部がプラザからトゥモローランドへと進み、パーク内には3部のみ存在している状態になります。
プラザはパレードが終了し、照明や音楽は通常通りに戻ります。●20:20ころ
いよいよ3部も最後のショーを終え、トゥモローランドを出発し帰って行きます。
パーク内のパレードルートは全てのエリアで通常通りに戻ります。
次号以降をお楽しみに
いかがでしたか?ファンティリュージョンの全体的な魅力を大まかに解説してきました。
しかし、ファンティリュージョンにはまだまだ隠された秘密や、こだわり、技術や演出がつまっています。
次号以降は下記のようにさらに掘り下げて行きます!
※内容が変更する可能性あり
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次号以降の特集予定
1部〜ミッキーのマジカルガーデン〜
1部だけに焦点をあて、一つ一つのフロートやキャラクターを掘り下げて行きます!
2部〜ディズニーヴィランズ〜
2部の悪役達に焦点を当てます。ファンティリュージョンといえばこのブロック!という方も多いはず。
3部〜ハッピーエンディング〜
最後の部、3部は映画の主役を飾ったカップル達。華やかな雰囲気でパレードを締めくくります。
フォトギャラリー
当時の貴重な書物や資料から様々なショットを掲載します。
音楽と技術
パレードを引き立てる重要な存在です。
デザインや衣装とキャラクター達
ここにももちろん、ディズニーならではのこだわりが。